ナチスに「退廃」の烙印をおされた美術家たち
Artists branded Degenerate by Nazis
所蔵作品展 第1室 2011年10月4日(火) ~ 2011年12月25日(日)

どのような芸術が非ドイツ的で第三帝国に受け入れられないかを示すため開催された「退廃美術展」。この展示に出品された美術家を紹介します。
1933年にナチス政権が誕生すると,それまでワイマール共和国時代に発展してきたドイツの現代美術は組織的に抑圧され,反面,運営・イデオロギーの両面で政府の統制下に置かれたアカデミックな芸術が育成されるようになった。現代美術の面目を潰し,愚弄しようという目論見の展覧会が相次いで開かれていった。その頂点が,1937年7月19日にミュンヘンの考古学研究所で始まった「退廃美術展」である。
「退廃(entartete)」とは本来生物学の用語で,変異して生存しえない特殊な種を形容する。この語を利用して,ナチスは「健全でない」美術を晒し者にした。
展観されたのはドイツの公的コレクションから選ばれた約120人の芸術家の作品約650点。「退廃美術作品を選ぶように」という帝国宣伝相ゲッベルスの委嘱を受けて美術院長のツィーグラーがわずか3週間足らずで準備した展覧会だった。チラシには「苛まれたカンヴァス/魂の腐敗/病的な幻想/精神病的不能者/国立及び市立の機関が恥知らずにもドイツ国民の何百万マルクの金額もの財産を無駄遣いして買った」などと記された。3ヶ月余り開催されたこの展示には,200万人以上もが来場した。
出品目録PDF(1163KB)
見どころ
パウル・クレー 新ヨーロッパ版画集第1集 内なる光に照らされた聖人
クレーも誹謗中傷された作家の一人である。掲載作品と別の刷りのケルンのヴァルラフ=リヒャルツ美術館の所蔵品を含め,油彩画6点,水彩画6点,版画3点が「退廃美術展」に展示された。
展覧会の手引きの中で,この《内なる光に照らされた聖人》は精神病患者の作品と比較されていた。
クルト・シュヴィッタース メルツ394,ピナコテーク
シュヴィッタースの作品はドイツ国内の公立美術館から13点が押収された。そのうち「退廃美術展」にコラージュ作品4点が出展された。1940年にシュヴィッタースはイギリスに亡命するが、敵国人として16ヶ月抑留される。