展覧会
展覧会Exhibition

画家の自画像と創作の現場

所蔵作品展 第2室

2011年7月12日(火) ~ 2011年10月2日(日)

Painter's self-portrait and creation site
画家の分身ともいえる自画像は、画家が自己をどのように見つめていたのかを知ることのできる、肖像画の中でもとくに興味深いジャンルだといってよいでしょう。このたびの特集では、広島ゆかりの洋画家らによる自画像作品を中心に、アトリエをはじめとする制作空間を示す作品や関連資料を併せて展示します。

広島県立美術館では、広島市中心部にある2つの美術館と連携し、美術を身近に感じていただけるよう、さまざまな活動を協力して行っています。今夏は、各館のコレクションを「広島」をテーマにご紹介する連携企画を初開催。

こ の展示室では、小林千古、南薫造、靉光ら、明治中期から終戦までの広島洋画史の各時代を代表する作家の作品とともに、田中万吉、檜山武夫、山路商といった、大正から昭和戦前期にかけて個性的な画風で活躍した画家たちの、力強く、真摯な自画像作品もあわせてご紹介します。
(作品は、小林千古《自画像》)

出品目録PDF

見どころ

檜山武夫の自画像

檜山武夫(1906-1932)は、広島市出身。広島機関庫で働きながら、昭和初期の画壇で活躍しました。
靉光や山路商らと交友しつつ、駅や陸橋などの職場風景とともに、多数の自画像を制作。この作品に描かれた黒っぽい上着は、おそらく機関庫の制服と考えられます。
油絵の具を使う前に、まずは素描の技量をしっかりと身につけるべきだと考えた、いとこで画家の檜山美雄の助言により、作者は数年にわたって素描の鍛錬を積みました。
この作品においても、凹凸を誇張しつつ迷いなく引かれた太い輪郭線が、画面に力強さをもたらしています。
冷静な眼差しでこちらをじっと見つめる自画像。内に秘めた強い感情と、それをとらえる画家としての客観的な視線が交錯し、作者の現存作の中でも、ひときわ印象深い一点です。
展示室には、他にも、ペンや墨など、さまざまな素材による数多くの素描の自画像を展示しています。画家が仕事の合間をぬって制作し、愛着を込めて丹念に描き出した職場の風景とともに、どうぞごゆっくりご覧ください。

山路商の自画像(左図)とアトリエ(右図)

山路商(1903-1944)は、新潟県長岡市出身。少年時代を中国大陸で送り、1920年に広島市に移住。1920年代ば頃から、画壇で活躍を始めました。絵画をはじめ、詩や舞台美術、文芸評論など、幅広い分野で活躍。海外の先進的な美術動向を鋭敏にとらえ、確かな表現力により作品化したその前衛的な芸術精神は、新たな表現を目指す若手芸術家たちを強くひきつけました。

左の作品は、作者の晩年にあたる戦中期の自画像。丸眼鏡とともに風貌の特徴であった長髪は、すでに短く切られています。
ごく若い頃から、新しい制作に取りかかる際には、常に自画像を描いたといわれるほど、山路にとって自画像は生涯にわたるテーマであり、創作の原点でもありました。
このたびの特集では、靉光や檜山武夫をはじめ、多くの美術家が集った山路のアトリエを描いた自作とともにご紹介します。